住宅における快適な空気環境の維持は、健康的な生活を送る上で欠かすことのできない要素です。
特に、室内の換気システムは、室内の二酸化炭素濃度や湿度の調整、シックハウス症候群の原因となる化学物質の排出、そしてカビやダニの発生抑制に深く関わっています。
数ある換気方式の中でも、第1種換気と第3種換気は、その仕組みや特性において大きな違いがあり、住宅の快適性や省エネ性能、さらには日々のランニングコストにまで影響を及ぼします。
それぞれの換気方式が持つ具体的なメカニズムを正確に理解し、メリット・デメリットを把握することは、自身の住まいに最適な換気環境を選択するための第一歩となるでしょう。
住宅換気第1種と第3種の違い
第1種換気は給排気ともに機械制御
第1種換気方式は、室内に新鮮な空気を取り入れる「給気」と、室内の汚れた空気を排出する「排気」の両方において、ファンなどの機械的な動力を用いるシステムです。
具体的には、給気ファンによって屋外から計画的に給気され、同時に排気ファンによって室内の空気が強制的に排出されます。
この方式の最大の特徴は、給排気量を細かく制御できる点にあり、建築基準法で定められた換気回数を確実に満たすことが可能です。
さらに、多くの第1種換気システムでは、排気される空気の熱を回収して給気される新鮮な空気を予熱・予冷する熱交換器(ロスナイなど)が組み込まれており、換気による室温低下や冷暖房負荷の増加を最小限に抑える工夫がなされています。
第3種換気は給気自然排気機械
対照的に、第3種換気方式は、給気を自然に行い、排気のみを機械的に行うシステムです。
室内の換気扇(浴室、トイレ、キッチンなどに設置されることが多い)を運転させることで、室内の空気が強制的に外部へ排出され、その結果として生じる室内の負圧によって、外壁の給気口やサッシの隙間などから新鮮な空気が自然に室内に流入します。
この方式では、家全体の換気量を機械的な排気ファンのみで調整することになります。
給気は自然の力に頼るため、風圧や温度差によって給気量が変動する可能性もありますが、構造が比較的シンプルであるという特徴があります。

第1種換気と第3種換気メリットデメリットと選び方
第1種換気は快適性と省エネ性を両立しやすい
第1種換気方式は、給排気ともに機械で制御できるという特性から、室内の温度環境を快適に保ちやすいという大きなメリットがあります。
特に熱交換器を備えたシステムの場合、冬場に冷たい外気が直接室内に入るのを防ぎ、暖められた排気を利用して給気を温めるため、部屋の温度が急激に下がるのを抑えられます。
同様に夏場も、排気の冷熱を利用して給気をある程度冷やすことができ、冷暖房効率を高め、結果として省エネルギーに貢献します。
計画的に換気量をコントロールできるため、高気密・高断熱住宅においては、空気の質を維持しつつ快適な室内環境を効率的に実現しやすいと言えます。
ただし、初期費用が高めになる傾向や、給排気ファンの定期的な清掃・メンテナンスが必要になる点は留意が必要です。
第3種換気は初期費用やランニングコストが低い傾向
第3種換気方式の主なメリットは、そのシンプルな構造ゆえに、換気設備の初期導入コストが比較的安価で済む点と、消費電力の少ない換気扇のみを使用するため、日々のランニングコスト(電気代)を抑えやすい傾向にあることです。
特別な熱交換機能などを必要としないため、手軽に導入できるという利便性もあります。
しかし、給気が自然に行われるため、外気温の影響を受けやすく、特に冬場には冷たい外気が隙間などから直接流入し、室温が低下しやすいというデメリットがあります。
また、換気扇の運転状況や外気条件によっては、計画通りの換気が行われにくい場合も考えられます。
住宅の性能やライフスタイルで最適な換気方式が変わる
第1種換気と第3種換気のどちらが優れているかは、一概に断定できるものではなく、住宅の性能や、住む人のライフスタイル、重視するポイントによって最適な選択肢は異なります。
例えば、断熱性・気密性に優れた高気密高断熱住宅においては、計画的な換気と熱損失の抑制が重要となるため、第1種換気が有利な場合が多いでしょう。
一方、建築コストを抑えたい場合や、シンプルな運用を望む場合には、第3種換気が適していることもあります。
また、省エネ性能を最優先するのか、初期費用を抑えたいのか、メンテナンスの手間を考慮するのかといった、住む人の価値観や優先順位によっても、最適な換気方式は変わってきます。
自宅の新築やリフォームの際には、これらの点を総合的に考慮し、専門家のアドバイスも参考にしながら慎重に検討することが推奨されます。

まとめ
住宅の換気システムには、給排気ともに機械で行う第1種換気と、給気は自然、排気のみ機械で行う第3種換気という、大きく二つの方式が存在します。
第1種換気は、熱交換器などを活用することで快適性と省エネ性を両立しやすい一方、初期費用やメンテナンスが必要となる傾向があります。
対して第3種換気は、初期費用やランニングコストを抑えやすいというメリットがありますが、室温への影響や換気量の安定性において考慮すべき点があります。
どちらの方式がご自身の住まいに最適かは、住宅の断熱性・気密性といった性能、そして予算や快適性、省エネ性など、何を重視するかというライフスタイルによって大きく左右されます。
ご自身の家づくりや住環境の改善においては、これらの特性を理解した上で、将来的な住み心地や維持管理コストまで見据えた、最適な換気方式を選択することが肝要です。